肥満症外来について

肥満症とは

「肥満」と「肥満症」は違います。「肥満」は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数 (BMI) 25以上と定義されます。「肥満症」は、BMI 25以上かつ、肥満による11種の健康障害が1つ以上あるか、または内臓脂肪蓄積がある場合に診断されます。「肥満」とは異なり「肥満症」は減量による医学的治療の対象になります。

肥満症

BMIが25以上 + 〈健康障害(いずれか1つ以上)or 内臓脂肪型肥満〉

肥満症の診断に必要な11種の健康障害

耐糖能異常(2型糖尿病や耐糖能異常)
脂質異常症
高血圧症
高尿酸血症、痛風
冠動脈疾患
脳梗塞、一過性脳虚血発作
非アルコール性脂肪性肝疾患
月経異常、女性不妊
閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群
運動器疾患(変形性関節症;膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
肥満関連腎臓病

内臓脂肪型肥満の診断

〈腹囲の測定〉男性85cm以上/女性90cm以上

BMIとは、身長と体重から算出される体格指数で、BMIは以下の式で求められます。
 ・BMI=体重(kg)÷{身長(m)× 身長(m)}
 例えば、身長170cm、体重65kgの場合、以下のようになります。
 BMI=65÷(1.70×1.70)=22.49

肥満の要因について

肥満、体重が重いと「自己管理能力が低い」という偏見にさらされている場合も少なくありません。体重が増える原因はそれだけではなく体質、生育、社会的背景など様々な要因が影響を及ぼします。単に自己管理能力が低いと決めつけられ医学的な適切な治療機会を失うのは非常に残念なことと考えております。適切に問診、治療導入させていただき健康被害を少ないものにできればと考えておりますのでお気軽にご相談ください。

肥満症を治療すべき理由

肥満症は、日常生活のしづらさだけでなく、さまざまな病気を引き起こしたり、今ある持病を悪化させる原因になります。

高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を発症・進行させやすい
睡眠の質を下げる睡眠時無呼吸症候群を誘発
心血管疾患や脳血管障害のリスク増大
膝や腰の負担による関節痛の悪化

体重を適切に管理することは、「見た目のため」だけではなく、病気を予防し、元気に過ごせる期間(健康寿命)を延ばすためにとても大切です。

当院では、生活習慣指導、薬物療法による医学的根拠のある治療を診療ガイドラインに基づき行いますので、どうぞ安心してご相談ください。

肥満症の治療について

肥満症の治療法は、主に生活習慣の改善、薬物療法、外科的治療の3つに分けられます。

【生活習慣の改善】
食事内容の見直し(摂取エネルギーの制限、バランスの取れた食事)と、適度な運動(有酸素運動、筋力トレーニング)を継続的に行います。これはすべての治療の基本です。

【薬物療法】
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、医師の判断で薬が処方されることがあります。GLP-1受容体作動薬(ウゴービ・ゼップバンド)・漢方薬などがこれにあたります。

【外科的治療】
高度肥満症(BMI 35以上)に対して、胃を小さくするなどの手術を行うことがあります。専門医の診断が必要です。

肥満症治療指針

1. 肥満症の分類

〔肥満症〕25≦BMI<35
〔高度肥満症〕35≦BMI

2. 減量目標

〔肥満症〕現在体重の3%以上減量
〔高度肥満症〕現在体重の5〜10%減量(合併症の程度により調整)

3. 基本治療

〔肥満症〕食事療法の強化+薬物療法
〔高度肥満症〕食事療法の強化+薬物療法+外科療法

(日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」より引用)

当院の肥満症外来について

対象となる方

20才以上の方で糖尿病・高血圧・脂質異常症のいずれかがあり、BMIが27以上の方

〔BMIが27となる身長と体重の目安〕

150cm 60.8kg 155cm 64.9kg 160cm 69.1kg
165cm 73.5kg 170cm 78.0kg 175cm 82.7kg
180cm 87.5kg 185cm 92.5kg

治療の基本方針

美容目的や短期間だけの減量を目的とした治療は安全性が確立していませんので、当院では行っておりません。
治療の基本は、生活習慣の改善です。お一人おひとりの生活スタイルや体質に合わせた食事・運動療法を丁寧にアドバイスし、健康的に適正体重を目指せるようサポートいたします。そのうえで必要に応じて、薬物療法をご提案します。

安心の医療連携

より詳しい検査や高度な治療が必要な場合は、地域の基幹病院や専門医と連携し、適切な医療を提供します。

GLP-1受容体作動薬を用いた肥満症治療について

GLP-1受容体作動薬 ウゴービ(一般名:セマグルチド)、GLP-1/GIP受容体作動薬 ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)は、週1回の皮下注射にて食欲を抑えたり、満腹感を高めて食事量を減らすことで体重減少、腹囲の減少を促す効果が期待されます。
※海外および国内の臨床試験において、平均的に10〜20%程度の体重減少効果が報告されています。

両薬剤ともに日本国内で肥満症の治療薬として正式に承認された薬剤です。当院では、肥満症への適応内使用に限定し、自由診療にてウゴービ・ゼップバウンドを処方します。

美容目的や短期間ダイエットのみを目的とした使用は、当院では行っておりません。これは医療機関としての責任として、患者さまの安全性を最優先に考えているためですのでご理解ください。

特 徴 ウゴービ(セマグルチド) ゼップバウンド(チルゼパチド)
承認時期 2024年2月 2025年3〜4月
作用機序 GLP-1受容体のみ作用 GIP+GLP-1両方の受容体に作用
減量効果 最大約 -14%程度(68〜72週) 最大 -18〜22%(72週)
腹囲減少 約 -13 cm 約 -18-20 cm
副作用 吐き気・便通異常など 同様+効果強めのため
副作用もやや多い可能性
適応条件 同じ(BMI・合併症基準あり) 同じ(BMI・合併症基準あり)

両薬剤ともには日本で肥満症に対して保険適応がある薬剤です。しかし実際に保険適応で処方するには、下記の規制があります。

保険診療でGLP-1受容体作動薬を処方できる医療機関(大学病院 専門施設)は限られている
処方までに6か月以上の通院と生活習慣指導が求められる
2ヶ月に1回以上の栄養指導の継続(投与前 投与後ともに)

日々お忙しい方にとっては通院や時間の確保が難しく、保険診療での治療は現実的な選択肢にならないかもしれません。そこで当院の肥満症外来では、適応を満たす方には自費診療(適応内使用)でのウゴービ・ゼップバンドを処方する体制を整えています。

GLP-1受容体作動薬の主な副作用

項主な副作用(多くは一過性):吐き気、便秘、下痢、頭痛、食欲不振など
重篤な副作用(まれ):膵炎、胆管炎、腸閉塞、低血糖、アナフィラキシーなど
服薬中は体調の変化に注意し、不安な症状があれば早めにご相談ください。

GLP-1受容体作動薬(皮下注射)による治療対象となる方

適切な食事療法・運動療法では十分な効果が得られない以下の条件を共に満たす方

高血圧・脂質異常症・2型糖尿病にいずれかの診断を受けている
BMIが27kg/u以上であり、2つ以上の「肥満に関連する健康障害」を有するまたは、BMIが35kg/u以上

【肥満に関連する11の健康障害】
① 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など) ② 脂質異常症  ③ 高血圧
④ 高尿酸血症  ⑤ 冠動脈疾患  ⑥ 脳梗塞・一過性脳虚血発作
⑦ 非アルコール性脂肪性肝疾患  ⑧ 月経異常・女性不妊
⑨ 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
⑩ 変形性膝・股関節症、変形性脊椎症  ⑪ 肥満関連腎臓病

※保険診療での治療を希望される方、専門機関での保険診療による治療が適切と思われる方は、対応可能な医療機関に紹介させていただきますので、ご安心ください。

※治療の目的・方法・予想される効果・および起こりうる副作用や使用上の注意点について十分にご説明したうえで、同意書にご署名をいただいた方に限り、自由診療としてご提供します。

当院にてGLP-1受容体作動薬による治療が提供できないケース

20才未満の方、70才以上の方
過去に本剤の成分に対し過敏症の既往のある方
妊娠中・授乳中、または妊娠希望の方
糖尿病治療薬・経口避妊薬・抗凝固薬(ワルファリン)を服用中の方
重度の胃腸障害、腎障害、肝障害のある方
膵炎・腸閉塞の既往がある方
甲状腺疾患の方、甲状腺髄様がんの既往歴・家族歴がある方
内分泌疾患やステロイドなどの薬剤による肥満の方
摂食障害(過食症・拒食症)、うつ病の方
激しい運動やアルコール過飲など低血糖をおこす恐れがある方
 その他、重病治療中など、医師が不適切と判断した場合

肥満症外来(自費診療)の流れ

肥満症外来は院長(循環器内科専門医)の診療時間に完全予約制で行います。
事前に電話か受付にてご予約ください。

【注意】
法律上、保険診療と自費診療を同じ日に併せて行うことができません。
自費診療と保険診療は別日でご予約ください。

① 初回受診

ご持参いただくもの

健康保険証(状況により保険診療となる場合があります)
お薬手帳
健康診断や他院での検査結果(お持ちの方)

初回の流れ

血圧測定・血液検査(高血圧・脂質異常症・糖尿病の診断に必要)
体組成計(InBody)による体成分測定
医師による診察・問診(生活習慣や健康状態を確認し、治療方針を検討)
費用目安:初診料 3,300円+血液検査料 3,500円+薬剤料

※直近2か月以内の検査結果をご持参いただければ血液検査を省略できる場合があります。当院で定期採血を受けている方は採血不要です。

※医師が「適切な食事・運動療法をすでに継続されている」と判断した場合は、初回からウゴービ・ゼップバンドの処方が可能な場合もあります。

② 投与開始(食事・運動療法で効果が不十分な場合)
適応のある方には、ウゴービまたはゼップバンドを少量から開始します。

③ 2週間後の再診
血圧測定
体成分測定
薬の効果や副作用の確認

④ 継続治療(1か月ごと)
効果に応じて薬剤の増量を検討
必要に応じて体成分測定・血液検査を実施
薬物療法に加え食事・運動療法を組み合せて生活習慣の根本的な改善をサポートします。

GLP-1受容体作動薬の投与方法と費用について

週1回、決まった曜日に、お腹か太ももに自分で皮下注射します。
注射の打ち方については、看護師より丁寧に指導させて頂きますのでご安心ください。
毎回同じ場所に注射すると皮膚が固くなってしまい薬剤の吸収が悪くなるため、同じ場所に投与しないよう少し場所をずらして注射します。
治療開始時は少量から始め、医師の指示に従い、徐々に用量を増やしていきます。

注射を忘れた場合は

次回注射予定日まで 3日(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに1回分を注射してください。その後はあらかじめ決められた曜日に注射をして下さい。
次の注射予定日まで3日(72時間)未満の場合は、忘れた分は注射せずに、次の予定日に1回分を注射してください。

料金(税込) 自由診療となりますので、費用のご負担は高くなります。

初診料 3,300円
再診料 1,100円
採血料 3,500円(3ヶ月に1回を推奨)
栄養指導
(管理栄養士による)
初回:2,600円  2回目以降:2,000円
(15分間 希望される方のみ)

薬剤(GLP-1受容体作動薬) 料金(税込)
ゼップバンド
(皮下注射)
2.5mg 11,000円/2本
22,000円/4本
5.0mg 34,000円/4本
7.5mg 42,500円/4本
10.0mg 47,000円/4本
12.5mg 51,000円/4本
ウゴービ
(皮下注射)
0.25mg 08,500円/2本
17,000円/4本
0.5mg 23,000円/4本
1.0mg 35,000円/4本
1.7mg 44,000円/4本
2.4mg 54,000円/4本

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